太陽の塔 森見登美彦

豊富なボキャブラリーから繰り出される、爽やかで、めんどうくさくて、陰鬱で、きらびやかな世界観の、少し風変わりな青春劇。


文章を読んでいるだけなのに、その情景がありありと浮かんでくる文章回しが素敵。特にゴキブリを回収するシーン・ゴキブリの仕返しを食らうシーンの思わず鳥肌が立つほどの生々しさ、叡山電車太陽の塔という水尾さんが夢中になるものを遠藤と体験するシーン(水尾さんの夢の中で遠藤と合うシーン)の風景の美しさは素晴らしいと感じた。

登場人物もとっても魅力的だ。

頭でっかちで卑屈、信念と悩みを抱える等身大の学生である「私」を初め、性格をとことんこじらせたトラブルメーカーであり私の一番の悪友でもある飾磨(シカマ)、2メートル超えの長身に長いあごひげと武将髭というインパクトから想像できないほど繊細で真面目なハートを持つ高藪、一緒にいるとこちらが申し訳なく感じるほどのネガティブマンで自分をとことん傷つける井戸。彼らズッコケ4人衆は見ていてとても面白く、「ずっと続けばいいのに」と思わず感じてしまう。

しっかり笑えて、センチメンタルな気分にもなってしまう、刺激的な作品でした。